1. これまでのSCAの品質評価方法とその問題点
- SCA(Specialty Coffee Association)の評価は、欠点評価と分析型官能評価の2つが主流だった 。
- 生豆鑑定では350gの豆を一つずつチェックし、5欠点以内をスペシャルティコーヒーと定めていた 。
- カッピングフォームでは、アロマ、フレーバー、アフターテイスト、アシディティ、ボディ、バランス、オーバーオールの7項目を定量評価し、クリーンカップ、ユニフォーム、スイートネスを定性評価していた 。
80点以上がスペシャルティコーヒーとされていた 。 - しかし、このSCA方式の官能評価は20年間運用される中で、以下のような問題点が浮上してきた 。
- ウォッシュド製法向けに作られたため、ナチュラル製法のコーヒーの評価が難しい 。
- スペシャルティコーヒーの風味の多様化により、主観的な評価が増加 。
- 過剰な言語表現(パイナップル、ストロベリーなど)が消費者を混乱させている 。
- ナチュラルコーヒーの発酵由来の風味に対する明確な評価基準がない 。
- 旨味やビターネスといった要素が評価項目に含まれていないため、ブラジル産やスマトラ式のコーヒーの評価が難しい 。
- スペシャルティコーヒーの風味低下が著しいという問題 。
2. 新しいSCAの評価方法「CVA(Coffee Value Assessment)」
- SCAは、従来の官能評価に加え、持続可能性や多様性などの多面的な価値を評価するCVAを発表し、2024年から運用を開始している 。
- CVAは、物理的評価、技術的評価、感性的評価、外的要因評価の4つの評価軸で構成され、官能評価だけでなくコーヒーの背景やストーリーを重視する考え方 。
- SCAは、スペシャルティコーヒーを「単にスコアが高い豆を指すだけでなく、風味やアロマ、品質の持続性、トレーサビリティや持続可能性などの情報背景を含めた際立った特性が認められ、市場で追加的な価値を持つコーヒー、またはコーヒー体験」と定義している。
3. 堀口珈琲研究所が提案する新しい官能評価方式
- CVAは多角的な評価を試みるものの、品質評価の観点からは不十分であるとし、堀口氏は新しい官能評価の必要性を唱えている 。
- コーヒーの風味は、香り、酸、コク、旨味、甘味、苦味などが生み出す総合値であり、これらは有機酸、脂質、アミノ酸、メイラード化合物によって生成されると考えられている 。
- 堀口珈琲研究所では、2020年から以下の5項目50点満点の官能評価方式を採用し、理化学的な分析数値と相関性があることを検証した。
- アロマ: 香りの良さ
- アシディティ: 酸の質(華やかさ、果実味)
- ボディ: クリーミーさ、粘性、脂質量
- クリーンネス: 劣化度合い(酸化の少なさ)
- スイートネス: 甘さ(ショ糖量など)
- この50点方式はSCA方式と高い相関性があり、より精度の高い官能評価が可能であるとされている。
- さらに専門的な評価として、以下の5項目(合計10項目100点満点)の追加を提案 。
- 旨味: アミノ酸(グルタミン酸など)の感知
- ビターネス: 苦味の質(すっきりした苦味、丸やかな苦味など)
- バランス: 酸とコク、風味全体のバランス
- キャラクター: 産地や品種の個性、テロワール
- ファーメンテーション: 発酵由来の風味(基本的に低い評価)
- この100点方式により、ナチュラル製法やブラジル産、スマトラ式のコーヒーも厳密に評価できるようになると考えられている。
4. カッピングの真の目的
- カッピングは、単にコーヒーを評価するだけでなく、生豆の鮮度保持期間、風味が開く時期、可能な焙煎度合いなどを見極めるための上級スキルである。
一般のコーヒーの美味しさとは違う。

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